こどもが「自分の考え」を言えないのは、考えていないからではない|発達の視点で見る“言葉の出口”の育て方

作文を書こうとすると手が止まる。

発表になると、伝える自分の意見や考えが急に短くなる。

「どうしてそう思った?」と尋ねると、うまく対話が続かない。

そういったこどもの様子を見ていると、つい「まだ考えが浅いのかな?」「言いたいことがないのかな?」と感じてしまうこともあるかもしれません。

実際に、キッズのコーチングへのお申し込みを頂く際、我が子への気になりポイントとして、この部分を書いてくださる方も少なくないです。

でも、実際にはそうとは限らないんですよね^^

こどもたちは、考えていないのではなく、『考えていることを外に出すところで止まりやすい』ということがあります。

 

 

頭の中には、何かがある。

ただ、それを整え、順番に並べたり、ことばの形にしたり、相手に届くように出していくところで難しさが出やすいのです。

日々、こどもたちの学びやことば、おうち英語、自己表現に関わる中で、ここが大きな土台になると感じています。

【探究】も【作文】も【発表】も、【日々の親子の対話】も。

別々の力のように見えて、実はかなり近いところでつながっているんですよね。

今回は、

 

・こどもが『自分の考え』を伝えにくい時、どこで止まりやすいのか
・どんな関わりがその子の『ことばの出口』を育てやすいのか

 

…を発達の視点から整理してみたいと思います。

 

【今回のポイント】


・こどもが言えないのは、考えていないからとは限りません。
・作文/発表/探究は、実は同じ土台でつながっています。
・大切なのは、『もっと考えさせること』より、『ことばの出口が育ちやすい条件を整えること』。

 

こどもが『自分の考え』を言えないのは、考えていないからではない

 

こどもが言葉につまる時、見えている姿だけを切り取ると、どうしても

 

・語彙が少ない
・説明が苦手
・意見を持っていない
・自信がない

 

といった見え方をしやすくなるもの。

もちろん、そうした要素が全くないわけでもないです。

ただ、それだけで捉えてしまうと、本当にあるはずの『内側の動き』を見落としてしまうことがあるんですよね。

例えば、こういった姿を見せている時。

 

・選ぶこと自体はできるのに、理由を聞かれると止まる
・話し始めると、途中で何を言いたかったのか分からなくなる
・相手の意見を聞くと、自分の考えが解けてしまう
・感じていることはあるのに、『ことば』にしようとした途端、急に薄くなる

 

こういう姿って、考えがないというより、『考えをつかまえて、形にして、順番に出していく部分に負荷がかかっている状態』とも言えるんですよね。

そう、問題は、『中身が空っぽ』なのではなく、思考の交通渋滞が起きているような感じなんですよね。

 

作文・発表・探究が、実は同じところでつながっている理由

 

作文は【書く力】、発表は【話す力】、探究は【考える力】。

そう分けて考えられやすいものですが、実際には、その手前でかなり共通した土台があるんですよね。

それが

 

・自分の中にあるものをつかまえる
・何を先に伝えるのかを選ぶ
・理由や具体例とつなげる
・相手がわかる形に整える

 

という流れですね。

 

 

この流れがまだ育っている途中だと

 

・作文で手が止まりやすい
・発表で一言だけになりやすい
・探究で『調べた』で終わりやすい
・会話で『別に』『ふつう』で閉じやすい

 

ということが起こりやすくなってくるんですよね。

逆にいうと、ここが少しずつ育ってくると、作文だけが急に良くなるのではなく、発表や対話、探究の深まり方まで変わってくるのです。

なので私は、学びを『教科毎』に分けてみるよりも、その子のことばがどこで止まりやすいのかをみることを常に大切にしていたりします。

 

発達の視点で見る、こどもが止まりやすい3つの背景

 

『言えない』とひとことで言っても、背景は1つではないんですよね。

ここを一律で見ないことが、本当にとても大切だと感じています。

 

1. 頭の中にあるけれど、順番に並べるところで止まりやすい

 

考えは浮かんでいるのに、

 

・何から言えば良いのか分からない
・順番に並べようとすると抜ける
・話しているうちに最初の考えが飛ぶ

 

ということがあったりするんですよね。

このタイプの子は、『考えていない』のではなく、

 

考えを線にして外に出すところでエネルギーを使いやすい

 

ことがあるんですよね。

 

見えている事が多くて、どこを切り取れば良いのか迷いやすい

 

全体がよく見える子ほど、ひとつに絞るのが難しいことがあったりします。

 

・あれも関係ある
・これも言いたい
・でも全部言うと長くなる
・じゃあ、何を言えば良いのか分からない

 

これが結果的に止まって見える事があるんですよね。

これって、

 

『何もない』のではなく、むしろ逆の『見えているものが多いからこそつまりやすい状態』

 

とも言えるのです。

 

3. 感じていることはあるけれど、まだ言葉の形になりきっていない

 

「なんか違う」「こっちの方が好き」「イヤっていう程じゃないけど、しっくりこない」。

こんな風に感覚としては確かにあるのに、まだ明確な言葉として固まりきっていないこともあるんですよね。

この段階で無理に整った答えを求めると、こどもはますます『分からない』と伝えやすくなるんですよね。

でも本当は分からないのではなく、

 

まだ、ちょうど言葉になる途中

 

なのかもしれないのです。

 

おうちでできる関わり方|『正解を引き出す』より『出口をつくる』

 

こどもの言葉を育てたいと思うと、つい「ちゃんと説明できるように」と考えたくなるもの。

でもここで大切なのは、立派な答えを出させることより、その子が出しやすい出口を見つけることです。

 

いきなり『なんで?』を重ねすぎない。

 

「なんでそう思ったの?」は、良い問いになることもあります。

ただ、こどもによっては、急に深いところを掘られるように感じることもあるんですよね。

そんな時は、

 

・どっちの方が近い?
・先に思い出したのは、どこ?
・たとえると、どんな感じ?
・いちばん伝えたいのは、どの部分?

 

…といった、少し角度をずらした問いの方が、出口になりやすことがあります。

 

短い言葉でも『今の考え』として扱う。

 

「楽しかった」
「なんか違った」
「そっちの方がいい」

 

こうした短い言葉は、大人からすると物足りなく見える事があったりしますよね^^

ですが実は、そこを雑に扱わず、「今、そう感じたんだね!」と受け止める事が、次の言葉につながる事があります。

最初から完成形を求めるより、小さなことばの芽を見逃さないことの方が、ずっと大切だったりします。

 

話す前に、選ぶ・比べる・並べるを入れる

 

言葉が出にくい子にとっては、いきなり話すより、

 

・3つの中から選ぶ
・似ているものと違うものを比べる
・先/中/後で並べる
・大事な順に置いてみる

 

といった『前段階』があると、かなり話しやすくなる事があるんですよね。

言葉は、急に出てくるというよりも見えやすくなる条件が整うと出てきやすいものでもあるのです。

 

この力は、作文や発表だけにとどまらないもの

 

ここまで、【作文】や【発表】そして【探究】といった場面を中心に書いてきました。

ですが、こういった『自分の中にあるものをつかまえて、ことばにしていく力』は、学びの場面だけで使われるものではないんですよね。

日々の会話の中で、

 

・自分の気持ちを伝える時も
・誰かの意見を聞いて「私はどう思うか」を考える時も

 

この土台があることで、ことばは少しずつ育ちやすくなっていきます。

『おうち英語』という角度からもグローバル子育てについて発信をしていますが、そこでもやはり感じるのは、【英語だけを切り取って考えても見えにくいものがある】ということなんですよね。

英語力というと、英語をたくさん聞く事、話す事、単語や表現を増やす事が注目されやすいのですが、実際はその前に

 

・自分はどう感じたのか
・どこが気になったのか
・何を伝えたいのか

 

…といった、内側の動きをつかまえる土台があることで、言葉は別の言語にも繋がりやすくなるもの。

だからこそ私は、英語を英語だけで伸ばすものとして切り離してみるのではなく、こどもの発達や思考の流れ、その子なりの表現や育ち方と一緒に見ていく事を大切しています。

一見すると、作文や発表のような時間は英語と関係なさそうに見えるかもしれません^^

でも実は、こうした時間こそが、後から別の言語ともつながっていく土台になっていくことがあるのです。

 

他者の視点が入る場で、ことばは少しずつ育ちやすくなる

 

おうちでできることは、たくさんあります^^

その一方で、おうちだけでは育ちにくい部分もあるんですよね。

それは、他者の視点にふれながら、自分の考えを持ち直す経験。

 

 

誰かと意見が違った時に、

 

・なぜ自分はそう感じたのか
・どこが同じで、どこが違うのか
・相手の話を聞いた上で、今はどう考えるのか

 

こうしたやりとりは、1人で考えるだけでは育ちにく部分を動かしてくれるんですよね。

それもあり

 

・論点を整理する
・理由と具体例で考えを組み立てる
・相手の意見を受け取って、自分の考えを深める

 

そんな時間作りになれば…と、『対話型ディベート(探究型)』という機会を作ってみている感じです。
(→作文・発表・探究につながる『対話型ディベート(探究型)』については、こちら>>>

 

『話すのが得意な子のための場』というより、『考えをことばにしていく経験を積み重ねたい子に合いやすい場』。

作文・発表・探究・日常の会話。

そして英語を含めた、ことばとのつながり方。

そういったものの土台として、こういった時間は活きていくものになっていきます^^

 

海外教育でも大切にされる『考えをことばにする力』

 

海外教育というと、つい『英語力』や『発信力(発言力)』のような、見えやすい部分に目が向きやすいものです。

ですが実際には、その手前にある

 

・どう考えるか
・どう理由づけるか
・相手とのやりとりをしながら考えを深めるのか

 

といった部分がとても大切にされています。

例えば、IBでは、学びのの土台として、thinking skils や communication skills, research skills などが位置付けられています。

また、OECD Learning Compass 2030 でも、知識だけでなく、Skills・ attitudes and values・ competenciesを含む形で、これからの学びの枠組みが示されているんですよね

これって、ただ『たくさん知っている子が有利』ということではないんですよね。

むしろ、自分の考えをつかまえ、理由や具体例とつなげ、相手の視点を受け取りながら整えていく力が、学びの土台としてみられているということ。

だからこそ大事なのは、見えやすい『発信・発言』の部分だけを目指すことなく、その手前にある『考えをつかまえて、言葉にしていく土台』をその子に合う形で育んでいくことなのかな…と感じています^^

 

さいごに|こどもの『言えない』を、能力不足だけで見ない

 

こどもが『自分の考え』を伝えられない時、サポート側はどうしてもつい「もっと考えさせた方がいいのかな?」「語彙を増やした方がいいのかな?」と思いやすいもの。

でも実際は、

 

・頭の中にはあるけれど、順番に出しにくい
・見えていることが多くて絞りにくい
・感じていることはあるけれど、まだ言葉になりきっていない

 

そんな背景が隠れていることも少なくないんですよね。

だからこそ大切なのは、『言えない=足りない』と急いで結論づけることではなく、

 

その子のことばがどこで止まりやすいのかを見て、出口が育ちやすい条件を整えていくこと

 

なのだと思います^^

【探究】も【作文】も【発表】も、【日々の対話】も。

別々のもののようでいて、土台のところは繋がっています。

そしてその土台は、あとから英語や自己表現、グローバルな場でのことばのやりとりにも、静かにつながっていくことがあるんですよね。

もしも今、「うちの子、考えていない訳じゃない気がするんだけど、うまく出せない」…といった感覚があられる場合、そこには『まだ育っている途中の出口』があるのかもしれません^^

 


【🗂️関連記事】

関連記事

小5〜中学生の、思考と言葉の土台づくりに 対話型ディベート(探究型) 勝ち負けではなく、こどもが「自分の考え」を言葉にして届ける体験を。勝ち負けを競う場ではなく、「誰にとって?」「どんな条件なら?」と視点を増やしながら、自分の考え[…]

IMG

 

 

このブログ記事をフォローする