おうち英語の鍵は臨界期の意味を理解すること。母語である日本語での思考力の大切さ

こどもの発達と個性を活かしバイリンガルを育てるグローバル子育て、林智代乃です。

『おうち英語』をしていると多くの方が抱かれる、『日本語』と『英語』のバランス等に関するお悩み。

例えば
・英語で語りかけた方が良いのだろうか
・年齢が上がる毎に日本語量が増えるから英語に力をもっと入れた方が良いのか


などなどありますね。

外部有識者コーチとして、おうち英語に関する様々な質問にお答えをさせて頂いている『スピークバディ』さんでも、やはりこの部分に関するご質問は多いです。

スピークバディ英語学習Q&A

発達(心理/特性/認知/脳)を活かし、英語をこどもの個性を活かすツールに育んでいく関わりについて伝えるグローバル子育てコ…


おうち英語において、『日本語』『英語』の関係性についてしっかり理解しておくことは英語力向上に関係すること。

だからこそ改めてこの部分に関して書いていきたいと思います。

おうち英語で大切な『良質で大量のインプット』を支えるもの


『日本』という環境でおうち英語を始めようとした時、多くの方が『外で英語に触れる時間がないから、家庭で頑張らねば!』という思いを持たれることが多いと思います。

確かに、日本で生活をしていると日常で英語の必要性を感じる事がない程に、英語に触れる機会は少ないです。

2020年から英語が必修化になりましたが、その時間数は他アジア諸国の中でも実は大きな差を付けられる程に時間数は少なかったりもします。

そして『おうち英語』をしていると気付きにくい部分ではあると思うのですが、『こどもとの時間に英語ある環境を取り入れている』という家庭の母数はまだまだ小さいです。

SNSなどを利用していると、本当にたくさんの方が取り組まれているように錯覚し易くなりますが、実際はまだまだ少ないんですよね。

とは言え、私が活動を始めた当初から比べれば飛躍的に増えている印象はありますが^^

…と、こどもを取り巻く英語状況は、このような感じだからこそ、多くの方は『英語時間の確保』に焦るような気持ちになり易かったりもしますよね。

確かに、『良質で大量のインプット』は英語習得においては鍵となるものです。

ただ、
英語習得において鍵となる『良質で大量のインプット』は母語を通して培われた力があってこそ役立つ側面もある


ものだったりするのです。

特に、『日本』という環境においておうち英語をされる上では^^

以前、下記のブログ記事にて『おうち英語においての日本語』について書いてきています。

●言語習得理論を活かすために大切なこと

●おうち英語において大切な『環境』のこと

これらに繋がってくるお話にもなりますが、今回はちょっと違った角度からもお話をしてみようかと思います^^

結論;おうち英語だからこそ日本語が大事


『母語』という言葉を耳にすると多くの方は、『母語は1つ』と思われることが多いと思います。

『日本』という環境下で過ごしているとそう捉えがちになるものですが、実際は世界には2つ以上の母語を持つ方が多いほどに、『母語は1つとは限らない』ものだったりします。

これは『母国語』と『母語』の違いがあまり日本にはないからこそ生まれる捉え方なのかも知れませんね^^

では、『母語』とは何なのか。

【母国語】が『自分が生まれた国の言葉』という意味を持つのに対し【母語】は、
・1番初めに習得した言語で
・もっとも良く理解できる言語であり
・もっとも頻繁に使用できる言語で
・アイデンティティが持てる言語であり
・周りの人もそう認める言語


をさします。

これをグググキュッキュッとまとめてしまいますと、要は『母語とはこどもが最初に覚える言葉であり、親が日常的に使っている言葉』になります。

この
『親が日常的に使っている言葉』とは『こどもに対して…』ではなく『生活をしていく上で…』(おうちの方にとっての母語)というところがポイント


です。

なぜならば、
人は『社会性発達』『情緒面の発達』『知能の発達』には年齢相応に熟した言葉の存在が絶対に必要であり、その『年齢相応に熟した言葉』を通して育む思考力を我が子に培っていく上で、おうちの方自身が自由に考えや感情が表現できる言葉で関わることは大切


だから。

『我が子の成長と共におうちの方も英語力を上げていく』。

この考え方は私も好きですし、実際私自身がこどもの成長と共に得られているものも多々です^^

ただ、『どの言語で関わるのか』はこどもの思考力にも大きく影響するものだからこそ、こどもに関わるときの言語選びはとっても大切だと考えています。

『思考の道具』としての言語を『学習言語』といいますが、『人として学習していく』その上で大切な言語を育てることはイコール『言語習得の土台を築いていくこと』に繋がるものです。

「日本語は外で触れる機会がたくさんある」という考えもあると思いますが、知的活動をする際に大事な事は学習言語能力を磨くことで、これはコミュニケーションの道具としての生活言語はまた別物なんですよね。

また、別の角度からお伝えさせて頂きますと、こどもは高い好奇心を持ち合わせています。

この
こどもが持ち合わせる好奇心の芽をさらに伸ばしていく上で、それを支える学習言語となる母語の存在は想像以上に大きい


ものです。

特にお子さんが強い好奇心の高さを特性として持ち合わせている場合、その特性を活かす上でも『言語』の存在はとても大きいものになります。

母語の言語形成期からおうち英語を見る


…と、とても大切な存在の『母語』ですが、そんな
母語を身に付けていく期間を『言語形成期』と言い、この時期は一般的には0〜15歳までの間


と言われています。

この時期にしっかりと母語を身に付け、それにより育まれた思考力が結果、英語力を伸ばしていってくれるものとなります。

だからこそ、
おうち英語は最低15年計画で行こう!


と下記のブログ記事等を通していつもお伝えさせて頂いている感じです。


上記の記事では、『こどもを取り巻く環境の変化やこどもの心理的な発達』の側面から、『おうち英語は15年計画』をお伝えしています。

この『第二言語習得の鍵は母語』という考えは、今では言語習得においてとっても大切な考え方(メジャーな考え方)として広く広がっています。

『母語』を通して育まれる思考力が物事の興味感心をも広げ、それにより触れられる言葉がどんどん増える事でまた思考力が育まれ、それに伴って触れられる英語の範囲も深い理解を伴って増えて行く。

これは実際に
・アメリカ
・カナダ
・マレーシア
・韓国


などの各国による教育研究や調査結果からも出ており、第二言語習得についての経験値が進んでいる国程『母語ベースでの言語習得』という取り組みにシフトしていっています。

その理由は、言語形成期前半に第二言語に触れる時間を増やすと思考力が伴わず話せる内容も限られてしまっているから…というところからですね。

中には、幼児期・小学校中学年・小学校高学年の子たちの英語習得の様子を比較調査した際、小学校中学年の子たちの方が1番伸びが良く、次に小学校高学年の子たちが良かったという結果もあったりします。
(高学年の子たちは「分からない」を恥ずかしいと捉えすぎてしまっていての2番手でした。)

これも【思考力】が鍵となる理由ですね!


上記のことを踏まえても特に日本は
✔︎英語に触れる環境の少なさ
✔︎日本語と英語との言語的距離間の大きさ


からも、かえって『母語』の役割は必要以上に大きかったりします。

要は、
15年経った時に、どれだけの(英語)運用能力があるのか。
これがおうち英語の本当の意味での結果に近いものになっていく


ので、どれだけ小さな時に結果が出せたのか…は関係ないので母語を伸ばす事を大切にしていこうという訳です。

特にこどもの『母語』が伸びていくタイミングは『興味関心』『好き』に対する好奇心からです^^

『興味関心』『好き』をとことん楽しむ時間って、こどもの『個性』をさらに強くしていくというだけでなく、もっと深い意味合いをもっているのです♫

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おうち英語でよく出てくる『臨界期』の捉え方


英語力は『英語』で伸ばすのではなく、『英語以外の時間』が支えている。

そうは言っても
「『臨界期』という言葉があるように、小さなうちにやっておいた方がいいんじゃないの?」


という声もあると思います^^

確かに『低年齢だからこそ』のインプットのスムーズさはあったりします。

ただ、これと『臨界期』の話はまた別の話。

よく言われる『臨界期』ですが、
『臨界期』という言葉は、『母語』に対してのものであり、第二言語に対してのものではない


のです。

その『臨界期』が意味することは、
「この母語の臨界期を迎える前に母語の土台は確立させておきましょう。そうすると第二言語以降の習得がスムーズになりますよ」


という事なのです。

もちろん、『LとRが聞き取れる耳を作る(英語耳を作る)』と言われるものがあるように、『小さなうちにしておいた方が良い』とされるものもあります。

確かにこれもインプットの面と同様、『スムーズさ』からくるもの。

ただこれに関しても、『経験による慣れ』がそれをカバーしてくれるので『絶対』のものではなかったりします。


このように年齢が上がれば上がるほど、英語力には母語の力が大きく影響していきます。
母語である日本語がしっかり身についた子ほど、英語の運用能力がどんどん上がっていく


これが『おうち英語』をされていく上で知っておいてほしいものだったりします。

これは『英語に触れると母語の習得が遅れる』という話ではなく、
インプットした英語情報の処理能力を母語が上げていってくれる


というお話です。

『こどもの発達を活かす』は、こどもの発達を活かすから英語時間をたくさん設けるのではなく、こどもの発達を活かすからこそ、そして今いる環境(日本という環境)を活かすからこそ『母語』の力を伸ばす事が大切な訳です。

『発達を活かす』とは、こういう事ですからね^^

ですので、
英語に触れる時間が減った時は、程よい英語環境を整えながら『日本語力をどんどん伸ばし、思考力を育んじゃうぞ!』という心持ちで臨んでみちゃって♫


という感じです^^

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